ナレッジ共有したのに、なぜ現場で使われない?
「成果を出しているチームのやり方を横展開しよう」── 支援先でよく立ち上がるプロジェクトです。成功事例を言語化して共有すれば、全体の底上げになるはず。しかし3ヶ月後に確認すると、共有資料がフォルダに眠ったまま、というケースは少なくありません。
問題は「やる気」でも「時間の不足」でもなく、他者のやり方を自分の文脈に翻訳するプロセスが抜けていることにあります。
「着る」と「着こなす」── 仕事でも同じ構造
同じ服でも「服に着られている人」と「着こなしている人」がいます。仕事のナレッジも同じ構造です。
- 着る(コピー): 他者の手法をそのまま取り入れる。起点は「いい手法を見つけた」
- 着こなす(翻訳): 自分の現場の制約に合わせて調整する。起点は「自分との差分は何か」
着こなしの鍵は、「自分の体形=自分の現場の制約」に合わせて調整する手間を惜しまないことです。前回の記事では「差分を見ること」の重要性を書きました。今回はその先──見つけた差分を、どう「着こなし」に変えるかの話です。
着こなしに変える3ステップ
差分を「着こなし」に変える3ステップ
の3軸で分解
「何がうまいのか」
自分は何をしているか
「何が違うのか」
FBをもらい振り返る
「守→破への移行」
ステップ1:SBIで観察する
「あの人のやり方がいい」で止まらず、SBI(Situation・Behavior・Impact)で分解します。SBIは本来フィードバック用のフレームですが、「観察の型」として使うと差分が見えやすくなります。
- S(状況): どんな場面で
- B(行動): 具体的に何をしているか
- I(影響): それによって何が変わったか
例えば「1on1がうまい」→「週の始めに(S)、前回の宿題の進捗から入っている(B)。メンバーが事前に準備してくるようになった(I)」。ここまで分解して初めて、真似できる単位の素材が揃います。
ステップ2:自分の現在地と対比する
同じSBIの枠組みで、自分の現状を並べます。「自分は毎回白紙でスタートしていた」「そもそも宿題を設定していなかった」── 差分が言葉になると、何を変えるべきかが具体的に見えてきます。ここを飛ばして「とりあえず真似してみよう」に入ると、フィットしないまま終わるパターンに戻ります。
ステップ3:試す → フィードバック → 内省
差分を認識したら、守破離の「守」として相手のやり方に近い形で試します。最初から自分流にアレンジしないのがコツです。うまくいかなかったときの原因が分からなくなるためです。試した後にフィードバックをもらい、「なぜ結果が違ったのか」を振り返る。この往復の積み重ねが、「守→破」── 型から自分のものへの移行を生みます。
始め方のヒント
最近の社内ナレッジ共有で「結局使われなかった」事例を1つ取り上げ、SBIで分解してみてください。分解した行動を、受け手の現場の制約と突き合わせる──そこに着こなしのヒントが見つかります。「そのまま持ってくるだけでは動かない」と気づくこと自体が、最初の一歩です。
この考え方を体験エピソードも交えて深掘りした記事をnoteで公開しています。
→ note記事: 真似を”着こなし”に変えるまでの試行錯誤
組織のナレッジ活用・育成設計でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
→ お問い合わせ

