常勤医師の求人を出している。それでも、問い合わせにつながらない。
医療法人る・ぷてぃ・らぱん(通称・柊グループ)からの相談は、「医師採用を強化したい」という大きなテーマから始まりました。
当初から、採用上の強みがなかったわけではありません。院ごとの診療の特徴、働く人同士の連携、職場環境を整える取り組みなど、候補者に知ってほしい材料は、法人と現場の中にすでにありました。
課題は、それらが紹介会社や候補者へ渡せる情報として、まだ一つにつながっていなかったことです。
支援では、経営と現場が持っている情報を集め、紹介会社向けの資料、候補者情報を扱う仕組み、採用広報の動画へ落とし込みました。
2026年7月28日時点で、小児科、皮膚科、歯科、眼科、耳鼻科の5診療科で、医師・歯科医師計8名の採用が決定しています。
課題
- 求人を出しても、常勤医師の問い合わせにつながりにくい
- 法人の強みと出会いたい医師像が、紹介会社へ渡せる形になっていない
- 候補者情報の文字起こしと要約に、1件あたり平均約20分かかる
アプローチ
- 採用担当者と院運営マネージャーへのヒアリングから課題を特定
- 紹介会社向け早見表と、候補者情報を扱う仕組みを整備
- 院長の人柄や実際の職場を伝える採用広報動画を制作
期間中に確認された変化
- 5診療科で、医師・歯科医師計8名の採用が決定
- 候補者情報の処理時間が、平均約20分からおおむね5〜10分へ短縮
- 歯科では、紹介会社から候補者の提案を受ける事例が生まれた
動画で見る、柊グループの職場
採用広報では、求人条件だけでは見えにくい「実際に働く人」と「院内の空気」も伝えています。実写を中心に制作したInstagramリールも、その一つです。
▶ Instagramリールで、柊グループの職場の様子を見る
「採用に困っている」だけでは、次の一手を決められない
柊グループは複数のクリニックを運営しています。
各院で求める医師の専門や働き方は異なり、採用に関する情報も、経営、院運営、採用実務の各所に分かれていました。
複数院の経営と自身の診療を担う内藤理事長は、候補者との最終面談や重要施策の承認を担当します。一方、日々の紹介会社とのやり取りや候補者情報の整理は、現場の担当者が担っていました。
相談の入り口では、「採用が喫緊の課題である」ことは明確でした。ただし、どこに手を入れれば状況が動くのかまでは、まだ定まっていません。
求人媒体を増やすのか。求人票を書き直すのか。紹介会社との関係を見直すのか。
この段階で施策を先に決めると、現場で起きていることとずれる可能性があります。そこで支援は、採用担当者や院運営マネージャーへのヒアリングから始まりました。
経営と現場に分かれていた情報を、一つにつなぐ
ヒアリングでは、募集条件だけでなく、院ごとの特徴、診療の考え方、どのような医師と働きたいのか、紹介会社から候補者の連絡を受けた後に誰が何を判断しているのかを確認しました。
採用に関わる情報と仕事の流れをたどると、二つの課題が見えてきました。
一つは、柊グループの強みや出会いたい医師像が、紹介会社や候補者へ渡せる形になっていないこと。もう一つは、候補者情報の受け取りと整理に手作業が多く、次の判断へ進むまでに時間がかかっていることです。
職場環境を整える取り組みは、支援開始時から現場で進められていました。
「健康経営優良法人2026(大規模法人部門)」と、支援期間中の2026年7月に「ホワイト企業認定Gold」を取得。職場づくりに関する取り組みは、第三者からも評価されています。
採用で必要だったのは、新しい魅力を付け足すことではありません。法人と現場の中にある情報を拾い、出会いたい候補者が判断できる形へ整えることでした。
言葉、道具、運用を一緒に整える
最初に、院ごとの特徴、診療の考え方、働く環境、採用で大切にしたい基準を整理しました。
「働きやすい」「雰囲気がよい」といった言葉だけでは、紹介会社は候補者へ具体的に説明できません。候補者も、自分に合う職場かどうかを判断しにくいままです。
そこで、紹介会社が候補者と話している最中にも参照できる早見表を作成しました。各院の特徴と採用要件を、短時間で確認できる資料です。
文章だけでは伝わりにくい院長の人柄や診療スタイルは紹介動画にし、職場の様子はInstagramリールで伝えました。候補者が、実際に働く場面を想像できる情報を増やすためです。
同時に、候補者情報の受け取り方も見直しました。
以前は、紹介会社から電話で聞いた内容を担当者が書き起こし、院内で判断できる形へ要約していました。この作業には、1件あたり平均約20分かかっていました。
候補者情報をテキストで受け取り、文字起こしと要約を行う仕組みへ変更しました。担当者へのヒアリングでは、1件あたり平均約20分かかっていた作業が、現在はおおむね5〜10分で完了しています。
この支援では、資料、情報の受け取り方、採用広報を個別に終わらせず、現場が実際に使える状態までを対象としました。
資料と対話の往復で、施策を止めない
採用活動では、課題を整理して施策を提案しても、関係者の確認や日々の実務の中で動きが止まることがあります。
今回の支援では、現場の声をたたき台にし、関係者へ見せ、反応を受けながら次の形へ進めました。
紹介会社へ渡す情報が足りなければ資料をつくる。院長の人柄が文章で伝わらなければ動画にする。候補者情報の処理に時間がかかっていれば、受け取り方と作業の流れを変える。
こうした進め方について、内藤理事長は、雑談の中で次のように話しています。
「持丸さんがやっぱりついてから採用確率が上がりましたからね。……そんなタイミングの問題も採用はあると思いますけど。オーラ力※だと思うんですよ」
これは、採用成果の因果を示すものではなく、内藤理事長の実感を表した言葉です。支援では、資料と仕組みを整え、関係者の確認を受けながら次の行動へつなぐ往復を続けました。
5診療科で、医師・歯科医師計8名の採用が決定
2025年12月から2026年7月28日までに、小児科、皮膚科、歯科、眼科、耳鼻科の5診療科で、医師・歯科医師計8名の採用が決定しました。
歯科では、紹介会社から柊グループへ候補者の提案を受ける事例も生まれています。
内藤理事長も、現在の採用状況について「今のところ、かなり成果が出てきています」と話します。
採用人数に加えて、現場が候補者情報を判断に使える状態へ整えるまでの時間が短くなったことも、支援期間中に確認された変化です。
一つの施策だけで採用が決まったわけではありません。強みを伝える言葉、紹介会社が使える道具、候補者情報を扱う運用がつながったことで、採用活動を進める土台ができました。
次は、「まず働いてみる」入口をつくる
柊グループでは、スポット勤務を常勤採用への入口にする方法も検討しています。
最初から長期勤務を前提にせず、医師が現場を知り、法人側も一緒に働く感覚を確かめるための選択肢です。
今回の8名の採用は、この取り組みを始める前に決まったものです。スポット勤務からどのような出会いが生まれるかは、これから検証していきます。
課題がまだ言葉になっていない段階から、支援は始められる
「採用に困っているが、何から変えればよいか分からない」という相談は珍しくありません。
経営、現場、紹介会社に分かれている情報をつなぐと、求人を増やす前に整えるべき場所が見えてきます。
柊グループの事例で起きたのも、外から新しい魅力を持ち込むことではなく、すでにある強みを、出会いたい候補者に届く形へ変えることでした。
採用課題がまだ整理されていない段階でも、現在の求人票や候補者対応の流れを確認するところから支援は始められます。
※「オーラ力」の読み方について:内藤理事長によると、本来は「オーラ力(りょく)」ですが、アニメ『聖戦士ダンバイン』の作中では「オーラ力(ちから)」と表現されます。採用の話から、作品独自の読み方へ話題が広がった一幕です。

