「募集をかけても応募が来ない」「せっかくの候補者も選考の途中で離脱してしまう」。
長年、採用に悩みを抱えてきた株式会社ビリングシステムが選んだのは、「人事だけでなんとかする」のではなく、組織全体で採用に向き合う体制づくりでした。
本インタビューでは、人事総務部 次長の加藤真里子さんに、外部パートナーとして持丸が伴走する中で起きた変化や、採用から評価・育成へと広がる「人と組織」のストーリーを伺いました。
🧩課題
- 応募が集まりづらく 採用数が計画に届かない
- 書類〜面接〜内定までの リードタイムが長い
- 事業の特性もあり 魅力が候補者に十分伝わらない
- 採用活動において、人事がどのように部門を巻き込んだら良いか分からない
🧭アプローチ
- 採用プロセス上の数値(リードタイムや通過率など)を可視化
- 部長陣と対話し 人物像・コンピテンシーを言語化
- 紹介会社とのすり合わせや求人改善で 魅力を整理・発信
- 面接前すり合わせ・オファー面接など 現場と協同で採用を進めるフローを設計
🎯効果
- 長年停滞していた システム基盤部の採用が決定
- 短期間で 新卒2名・中途2名の内定受諾
- 面接準備・候補者対応の 現場の当事者意識が向上
- 採用改善がそのまま 評価制度・キャリア設計の土台に
事業と組織の特徴、そして採用の「行き詰まり」
――まず、御社の事業や組織の特徴について教えてください。
加藤真里子さん:
当社は一言でいうと、企業向けの決済支援サービスを提供している会社です。創業は2000年。長らくBtoB領域で、大手企業の決済周りに自社システムを導入し、業務効率化をお手伝いしてきました。
スマートフォンが普及してからは、スマホアプリ経由での決済も増え、当社でもアプリ開発・提供を行うなど、一部BtoC領域にも広がりつつある状況です。
組織としては、従業員数が100名を少し超えた規模で、主な部門は以下の通りです。
- 営業部門(所属人数が最も多い部署)
- システム部門
- 業務本部(お客様の業務を代行するなど複雑なオペレーションに対応する部署)
- 管理部門・内部監査 など
――外部支援導入前、人事としてどのような課題やモヤモヤを感じていましたか。
加藤:
ここ数年、思うように人が採用できない状況が続いていました。会社として年間の人員計画を立て、それに沿って人事総務部が採用を進めるのですが、「10人採用したい」と計画しても、結果がそこに届かない。
その原因として大きかったのが、
- 応募自体がなかなか集まらない
- 応募が来ても、書類選考〜面接〜内定までのリードタイムが非常に長い
- プロセスの長さや社内関係者間の温度感のずれから、せっかく来てくださった候補者の方に対してうまく魅力付けができない
という点です。
また、当社はその事業特性から具体的にビジネスモデルをイメージしづらいという方が多いようです。特に20代の若手の方の場合、toB色の濃い「決済ビジネス」とはどのようなものか?をご経験上イメージしづらいのではないかと考えます。
これまでの当社は社外に向けた発信も十分とは言えず、「母集団形成の壁」にずっと悩まされていた、というのが導入前の正直な状況です。
数字で現状を直視することから始まった「組織ぐるみの採用」
――ご一緒し始めて、最初に取り組んだのはどのようなテーマでしたか。
加藤:
まずは徹底した現状把握です。以前から採用に関する数字は記録していましたが、正直「並べて見て終わり」になっていました。
そこに持丸さんが入ってくださり、
- 応募数
- 各選考フェーズの通過率
- 内定までのリードタイム
などを改めて整理しながら、「なぜこの数字なのか」「どこで候補者が離脱しているのか」を一つひとつ深掘りしました。
結果としての数字を見るだけではなく、数字を起点に採用プロセスの問題をあぶり出したことで、「このままではいけない」と、組織として腹落ちできたことは大きかったと思います。
――数字の見える化以外に、印象に残っている取り組みはありますか。
加藤:
一番印象に残っているのは、部長陣との「求める人物像」の洗い出しです。
これまでも求人票には「こんな人が欲しい」と書いてはいましたが、抽象的で解釈もバラバラでした。
そこで、各部長と時間をかけて、
- そのポジションで成果を出す人は、どんな行動をしているのか
- どのようなスタンス・価値観を持っているのか
といったレベルまで人物像を深掘りし、言語化していく対話の場を設けました。
このプロセスを通じて「採用は人事任せではなく、自分たちの仕事だ」という意識が芽生えたと感じています。

――現場の変化を感じた象徴的なエピソードはありますか。
加藤:
一番大きかったのは、長年決まらなかったシステム基盤部の採用です。正直、「ここは長期戦になる」と半ばあきらめムードもありました。
最終面接まで進んだ候補者が他社を選択してしまい「あと一歩が届かない…」という状態が続いていたのですが、現場側から自主的な変化が起きたんです。
面接官同士で候補者情報をすり合わせたり、履歴書・職務経歴書を読み込んで、オファー面談の準備を入念に実施したりと自発的に行うようになりました。
その結果、複数社から内定を得ていた候補者の方が、最終的に当社を選んでくださいました。長年埋まらなかった枠が決まり、これはまさに、部門側の意識改革が成果につながった瞬間でした。
――採用に対する、社内全体の「空気感」はどう変わりましたか。
加藤:
以前は、「求人票を人事に出したら、あとは良い人を連れてきてくれるよね」という、どこか他人事な雰囲気がありました。
今は、
- 面接の優先順位を上げてスケジュールを調整してくれる
- 候補者対応を「自分たちの仕事」として丁寧に行ってくれる
といった動きが少しずつ当たり前になりつつあります。
採用活動を組織ぐるみで行う空気感が、ようやく醸成され始めてきたのかな、と感じています。
採用から評価制度へ――「キャリアが見える会社」へのシフト
――ここ数か月で、定量的な成果という意味ではどのような変化がありましたか。
加藤:
まず採用面では、
- 長年決まらなかったシステム基盤部の採用が決定
- ゼロベースからスタートした新卒採用で2名の内定受諾
- 中途も含め、この3か月で新卒2名・中途2名の計4名が内定受諾済み
という結果が出ています。
新卒については、
本来なら「すでに2年目の採用フェーズに入っているべきタイミング」で、ほぼゼロからのスタートだったので、社内的にも大きな一歩になりました。
――採用以外に、今ご一緒しているテーマとして「評価制度」があります。そこにはどんな狙いがありますか。
加藤:
今回、採用の課題を掘り下げていく中で、「入社後のキャリアイメージをきちんと伝えられていない」という弱点がはっきりしました。
評価制度自体は以前からあったものの、
- 1年ごとに形だけ運用している
- 個人のキャリアや成長とつながりづらい
といった状態で、20代の方が転職先として検討したときに、自分の5年後・10年後がイメージしづらい仕組みになっていたんです。
そこで現在は、
- 部署ごとの役割定義
- コンピテンシー(成果を出す行動特性)の洗い出し
- 新しい評価シート案の作成
などをセットで進めています。
これによって、採用の段階から、「ビリングシステムでは、こんな役割で、こんなふうに成長していけます」とキャリアプランを具体的に伝えられる状態を目指しています。
採用と評価は別々のテーマに見えますが、実際には一本の線でつながっていると感じています。
――現場の方々とのコミュニケーションで、印象的な変化はありますか。
加藤:
「会話の質と量」が変わったことです。チャットで済む内容も、意識的に直接相手の席まで行って話すようにしました。
そうすると、廊下やオフィスでも自然に、
- 「このあいだの面接どうでした?」
- 「次の候補者の方、こういう視点で見てみませんか?」
といった会話が増え、やりとりが「連絡」から「一緒につくる採用」へと変わっていきました。
人事自身の変化と、外部支援だからこそ開けた視界
――ご自身の考え方やリーダーシップの面で、変化を感じる部分はありますか。
加藤:
とてもあります。正直に言うと、以前の私はどこか受け身の人事でした。
求人票を出して紹介を待ち、来なければ「うちの条件面や知名度では他社さんに負けちゃうのも仕方ないよね」と外部要因に原因を求めていました。
しかし、今回の伴走を通じて、
- リードタイム短縮の工夫
- 求人票や訴求の強化
- 部門を巻き込んだプロセス改善
など、「今の条件の中でも自分たちができることはある」と気づけました。
採用に限らず、評価や制度設計でも、「手順を上流から組み立て直す」視点を持てるようになったのは、大きな変化です。
―― 外部支援としての持丸(amarielle)に対して、率直な印象を教えてください。
加藤さん:
「組織は人なり」という前提に立ち、人と組織の成長に寄り添って伴走してくれていると感じています。
社内だけで業務を進めていると、日々のタスクに追われ、「そもそも何のためにどう動くべきか」を見つめ直す機会がなかなかありません。そこに第三者として入っていただくことで、
- 客観的な視点で問いを投げかけてくれる
- 「もっと人に目を向けていい」と示してくれる
- 「全社を巻き込んでいい」と後押ししてくれる
と、自分だけでは気づけなかった視点が開け、組織の動かし方が変わってきました。
採用支援を通じて自社の文化や人を深く理解したうえで、「ビリングシステムらしい形」を一緒に考えてくれている――そんな信頼感があります。
採用・評価・育成を「一本の線」にする未来へ
――今後、一緒に探求していきたいテーマは何でしょうか。
加藤:
すでに頭の中でははっきりしていて、採用 ↔ 評価 ↔ 育成をしっかり連接させて、組織の基盤をつくることです。
これから新卒の方々も入社してきますが、現状、教育・研修の部分は当社の大きなウィークポイントです。
せっかく、
- 採用で「この人に来てほしい」という方に来てもらい
- 評価で「どのように成長してほしいか」を言語化しても
入社後の育成・学びの仕組みが整っていなければ、本人にとっても会社にとってももったいないですよね。
採用から評価・育成までを一本でつなぎ、「ビリングシステムで働くからこそ得られる成長」をしっかりと提供できる組織にしていきたいです。
――最後に、同じような課題を抱えている経営者や人事の方に、メッセージをいただけますか。
加藤:
そうですね…。
「自分だけで解決しようと抱え込まないでほしい」ということをお伝えしたいです。
採用や評価制度のようなテーマは、自分に経験がないまま「何とかしなければ」と思い続けると、どうしても行き詰まってしまいます。
そこに経験と知見のあるプロが一歩入ってくれるだけで、視野が一気に広がることを、今回本当に実感しました。
「あ、そんな考え方があるんだ」
「こう組み立てればいいのか」
と、脳みそがストンと納得する瞬間が何度もありました。
もし今、採用や人事のテーマで一人で悩んでいる方がいるなら、ぜひ一度、外部の力を借りることにも目を向けてみてほしいなと思います。きっと、世界が広がるきっかけになるはずです。
まとめ
ビリングシステムが抱えていたのは「人が採れない」「魅力が伝わらない」「採用が人事任せになる」という、多くの企業に共通する課題でした。
そこに外部パートナー・持丸(AMARIELLE)が加わり、数字で現状を可視化し、部長陣との対話を通じて「どんな人と働きたいか」を言語化。採用活動が人事だけの仕事から組織全体のプロジェクトへと変わり始めました。
その結果、
- 長年決まらなかった重要ポジションの採用成功
- 新卒・中途含む4名の内定
- 採用を起点とした社内コミュニケーションの活性化
といった成果が実現しました。
「採用に悩む企業こそ、外の視点を取り入れることで未来が開ける」——本事例はそのことを示す好例と言えるでしょう。

ビリングシステム株式会社
| 設立 | 2000年 |
| ウェブサイト | https://www.billingsystem.co.jp/ |

