建設業向けSaaSを展開する現場サポートは、急成長の中で「人事の役割が見えない」「組織課題を特定できない」という壁に直面していました。
外部パートナーと「いまを一緒に描く」ところから始まった10か月の中で、人事の役割や組織課題の輪郭が少しずつ立ち上がっていきました。
本記事では、その10か月の歩みと得られた学びを、牧園さん(管理本部 人事グループ グループ長)と小薗さん(管理本部 人事グループ 人事担当)に伺いました。
🧩課題
- 人事の役割や領域が曖昧で、組織課題を特定する基盤がなかった
- 新たなフェーズに向き合うなかで、事業や組織の向かうべき方向が共通言語化されておらず、優先順位がつけられない状態だった
- 急拡大により文化が揺らぎ、社員の適応度や解像度にばらつきが生じていた
🧭アプローチ
- 40名ヒアリングを通じて組織状態を多面的に収集・可視化
- Miroで組織のAsIsを抽象化/構造化により、課題のつながりと優先度を明確化
- ジョブディスクリプション導入で、役割・期待値・コミュ基準の土台を整備
🎯効果
- 「攻めの人事」として関わる領域が見える化され、社内の共通認識が向上
- 現場サポートのAs-Isが共通認識化され、取り組むべき優先順位が明確になった
- JD導入により目標設定が容易になり、コミュニケーションコストが下がった
- ミドル層の言語化や構造把握の力が向上し、施策の実行力・再現性が高まった
なぜ外部支援が必要だったのか ― 建設業SaaS企業の人事が抱えていた組織課題
――まず、御社の事業や組織の特徴について教えてください。
牧園:
私たち現場サポートは、建設業向けのSaaSを提供している会社です。「建設業の人たちが、もっと働きやすくなること」を理念としていて、主に公共工事向けの専用サービスを展開しています。主力サービスだけでなく、理念と照らし合わせながらいろいろな方向から新しいサービスを生み出していこうとしているのが現在の段階です。
組織面では、管理本部・営業本部・開発本部の3つの本部があり、その下に経営企画室、営業部などの部署が連なっています。今は鹿児島と福岡に拠点があり、組織全体では123名ほどの規模になりました。
――当時どのような課題やモヤモヤがあったのでしょうか?
牧園:
一番大きかったのは、「課題が特定できていない」ということでした。人事グループが立ち上がってまだ1年ほどで、自分たちが何をミッションとして動くべきなのか、事業の方向性とどう連動しているのか……そのあたりが見えづらかったんです。
事業の「あるべき姿」や、社内コミュニケーションの理想像もふんわりしたままで、「何から着手すべきか」、「優先度をどうつけるか」、「そもそもAs-Isの洗い出しをどうしたらいいのか」と手探りの状態でした。
人事って論点が多すぎるので、スコープ設計もすごく難しくて。
――その状況の中で、なぜ外部支援を入れようと思ったのですか?
牧園:
チイキズカン(地方企業と複業人材のマッチングサービス)で持丸さんと話す機会があって、「現場目線で動いてくれそう」という印象が大きかったんです。よくある「理想のTo-Be像を描き切ってからスタート」というやり方ではなくて、私たちがまだTo-Beを描けない状態でも、今のAs-Isをちゃんと受け止めてくれる気がしました。
小薗:
「一緒に、今のところから作っていく」というスタンスを感じられたのも決め手でしたね。人事として自分たちがどうなれば良いのか、一緒に考えてもらえるんじゃないかと期待しました。
牧園:
正直、その時点ではAs-Isの洗い出しすら難しかったので、まずは「現状を言語化するところ」から伴走してほしいという思いでお願いしました。
40名ヒアリングとMiro可視化で判明した“組織の現在地”
――最初に取り組んだテーマは何でしたか?
牧園:
まずは「とにかく現状を知ること」から始めたいと、持丸さんに40名のヒアリングをお願いしました。一人1時間、全社員の3分の1以上にしっかり話を聞いてもらったのは初めてで、かなり踏み込んだ取り組みでした。
小薗:
ヒアリングの入り口はすごくポップなんですよね。警戒心を解いて、楽しく話せる空気をつくってくれるので、みんなが正直に話せたのも印象的でした。そこから一気に深いところまで掘り下げてくれて、「こんなに本音が引き出されるのか」と驚きました。
――その40名ヒアリングから、どんな取り組みにつながっていったのでしょうか?
小薗:
印象に残っているのは、ヒアリング内容をMiroのボードで可視化してくれたことです。全部の声を抽象化して、構造として整理してくれたのが本当に新鮮でした。

牧園:
うちは人に対して細やかに気を配れる会社なんですが、一方で“抽象化して構造で捉える”ということには慣れていなかったんです。持丸さんの可視化を見たときに、「点が線になり、線が面になる」という感覚で、初めて課題同士のつながりが理解できました。
――現場の反応はいかがでしたか?
牧園:
経営陣の反応がすごく象徴的でした。
「どよ…」とした表情になったり、落ち込んだり、一瞬無になったり(笑)。でも、それくらいインパクトのある可視化だったんです。今まで感じていた課題が、構造として目の前に現れたので。
小薗:
人事の役割や領域もそこで見えてきましたね。「労務だけ」「採用だけ」ではなく、もっと経営と密接につながる仕事なんだと改めて理解できました。
――プロセスの中で、想定と違ったことや難しさはありましたか?
牧園:
正直、想定以上にやってくれたので「困った」ということはほとんどないです。
小薗:
強いて言えば、うち自身の課題として、まだ制度が整いきっていない部分があること。これは会社のフェーズとして当然の部分ですが、社員の適応や制度のキャッチアップなど、今後の宿題として残る点はありますね。
ジョブディスクリプション整備が生んだ変化と人事改革の成果
――関わった期間でどんな変化が起きたと感じていますか?
牧園:
まず、人事領域そのものが見える化されたことと、社内の課題感の共通認識ができたのが大きかったです。
いわゆる組織のミドル層であるグループ長への教育が必要な点や、今やらないといけないことが何なのか──そうしたものが具体的に見え始めて、実際に動き出しているところまで来ています。
その中でも、現場として一番インパクトが大きかったのは、ジョブディスクリプション(JD)ができあがったことだと思います。
6つのJDを作成したのですが、これまでJDを作る文化がなかったので、「あ、こういうのを作らないといけないんだ」という発見がありました。今までは「役割」や「期待」が曖昧だった部分が多かったのですが、JDができたことで目線合わせが格段にしやすくなりました。
小薗:
はい。余計な衝突や行き違いがなくなるので、コミュニケーションコストがかなり下がりました。
――メンバーやリーダーからの反応で印象に残っていることはありますか?
牧園:
40名ヒアリングのとき、「こんなに深く理解してくれるんだ」と驚いてくれた人が多かったです。営業に関しても、開発に関しても、その理解度の深さに驚かされたし、ご自身の事業会社での経験から同じような大変さを感じていたんだろうという親近感を持てたという声がありました。
小薗:
ヒアリングで「しっかり話せた」という感覚があったのか、その後、人事に期待を寄せてくれる声も増えました。組織を変えていくことに興味を持ってくれるメンバーが出てきたのも嬉しかったですね。「人事と一緒にやりたい」という前向きな空気が少しずつできてきた実感があります。
――お二人自身の考え方やリーダーシップにも変化はありましたか?
牧園:
私はMiroでの構造化が特に大きかったです。
課題や事象をただ並べるのではなく、構造として整理する。そのやり方がストックされて、今は自分の仕事にも応用しています。経営への答申の仕方なども、持丸さんのアプローチをそのまま“パクっている”ところがあります(笑)。
小薗:
私は、人事としての枠組みのつくり方を学んだことで、思考の幅が広がったのを感じています。
以前は「どう考えたらいいんだろう?」と悩んでいた場面でも、今は枠組みを使って整理しながら考えられるようになりました。
また、入口で意見をヒアリングしていただいたことで、この会社全体に対する解像度が上がり、人事としてメリットがとても大きかったです。
外部人事パートナーの価値 ― 経営と現場をつなぐ伴走支援とは
――外部支援としての amarielle(持丸)の印象を、率直に教えてください。
牧園:
まず、とにかく“視野が広いし深い”という印象があります。スピードも早いし、いろんなツールや考え方、新しいものをどんどん具体的なアウトプットとして持ってきてくれる。
当たり前のようで、実はこれができる人って多くないんですよね。
小薗:
そうですね。ただ知識があるだけじゃなくて、体感レベルで渡してくれるのがありがたかったです。事業会社の人としての感覚を持ちながら、「一緒にやろう」というスタンスで伴走してくれる。そこが他の支援と大きく違うところだと思います。
――今後、一緒に取り組んでいきたいテーマはありますか?
牧園:
あとはもう、To-Beを描き切るフェーズに行けると思っていて。そこを越えたら、やることってたくさん出てくるじゃないですか。それを一緒に具体化しながら、どんどん進めていきたいです。
小薗:
そうですね。今回の取り組みで“土台”は見えてきたので、この先はもっと制度設計とか、ミドル層育成とか、組織として必要なテーマを深めていく段階に入れると思います。
――最後に、同じような課題を持っている経営者や人事の方へ、どんな言葉をかけたいですか?
牧園:
とりあえず、まずは相談してみてほしい、というのが本音です。
人事領域って、「外部の力をどうやって借りたらいいのか」がそもそも分からない分野だと思うんですよね。部分的に切り出す支援ならたくさんあるけれど、私たちが求めていたのはそこではなくて。
牧園:
経営コンサルともまた違うし、人事だけでもない。その中間で、経営と組織の現実に入り込んで、一緒に見てくれる存在って実は貴重なんですよね。
小薗:
本当にそう思います。
実際に中に入ってもらうことで、「経営と密接に関わる領域」を体現して見せてくれる。そこをまず理解できるだけでも、大きな価値があると思います。
まとめ
今回の現場サポートの事例は、組織が急成長するフェーズで起こりがちな
「課題が明確にならないまま不安だけが積み上がる状態」
を、外部の伴走者とともに一つずつ解きほぐしていったプロセスでした。
- 40名のヒアリングを通じて可視化された組織課題。
- ジョブディスクリプション整備による役割の明確化。
- 人事として“どこまでを担い、何を目指すのか”を共通言語として持てるようになったこと。
そのすべてが、現場サポートの人事と組織が次のステージへ進むための“土台づくり”につながっています。
外部支援を入れることは、決して弱みではなく、
「自分たちだけでは気づけない視点を取り入れ、未来へのスピードを上げる選択」
です。
これからTo-Beの姿を描き、制度や仕組みを本格的に整えていくフェーズへ。
現場サポートの“これからの10か月”は、今回の取り組みによって、よりしなやかに、より強く前に進むものになるはずです。

